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手延べそうめんができるまで





2月のある日。夜明け前、午前4時。
この日の気温、氷点下8℃。
手延べそうめんの職人の一日がはじまります。

「今日は一段と冷えるね。昨日はからっ風が吹いたし、
こういう日は生地が固くてまとまりが悪い。
水をかなり加えないと。」

空の様子、空気の冷たさ、風の通り方。
作業場へ上がる道中に、身体が感じることがすべて。
この日の配合が決まります。



1袋25kgの小麦粉が次々と開けられ、
その半量にも及ぶ水、そして塩。
こね機に投入する作業だけでもすでに重労働ですが、
これは始まりにすぎません。

小麦粉は2種類をブレンド。
私たち「丹波の黒太郎」の親会社である
老舗食品商社「かね善」から、専用粉を供給していますが、
2種類の配合比率は職人にお任せしています。

「強力粉を多くすると、どうしても色が付くからね。
なるべく白くしたいから、薄力の方を多めにしたい」とは藤塚。

「そうめんはやっぱりコシが命。
コシを強くするために、配合にはこだわるね。」
こちらが高路のこだわりです。

完成品の良しあしを決める、一番最初で一番重要な工程が、
“配合”と“こね”の作業です。



生地を固める“麺圧”の工程を終えると、
職人の奥さんも登場。

“板切り”の工程は、板状にカットした生地を
2つに重ねあわせて薄く延ばす作業です。
何度も繰り返される延ばしの作業は、
匠と奥さんのあうんの呼吸で行われます。

続けて“油返し”の工程へ。



「油は最近敬遠されるけどね。
油を塗ることで、茹でて時間が経っても、
水分が染みこまなくて茹でのびしにくくなるから。
でも油の量を極限まで少なくするのが、腕の見せ所やな。」

一見なんてことのないような作業に、匠の技が光ります。

“油返し”が済むと、生地は一度寝かせます。



空が明けはじめるころ、匠も束の間のリフレッシュ。
そしてすぐに、次の工程“こより”がはじまりました。

縒りをかけて、紐状の生地をどんどん細くしていきます。
少しずつ麺らしくなってきました。



機械の助けを借りる作業ですが、
スイッチを入れたらおしまいということはなく、
ずっと付きっきり。
麺に手を添えて、伸び具合を調整しています。
目が離せないのは、子どもと同じようなもの。
手がかかるほど、愛おしいものかもしれません。

短い休憩をはさんで、午後から始まった“掛巻(かけば)”の
作業は、二本の棒に8の字に麺を掛けていきます。





太さを均一にして、麺が重ならないように、離れないように。
“コマ”と呼ばれる丸い部品に、
一瞬の判断で麺を掛けたり外したりの調整を行います。
ぴったりと列を乱さないうつくしさが、
次の工程につながります。

「伊和の匠」のそうめんは、長く熟成させる「二日麺」。
次々と“室(むろ)箱”に収められていく麺は、
翌日までじっくりと寝かせます。



時間が少し巻き戻り、
この日は午前10時ごろから“門干し(かどぼし)”の工程へ。



前日に熟成させた麺を
“はた”と呼ばれる台に掛けて干していきます。
ここまでくると、一気にそうめんらしさが感じられます。

2m近い“はた”の上部の穴に上の棒を差し、
麺を延ばして下の棒を差しこんで固定する。
麺は意外に力強く、
立ったりしゃがんだりの作業が身体にこたえます。



すべての“はた”が並んだ作業場は、実に壮観です。



“門干し”が終わるころ、
乾燥のために、天井のファンが回りはじめました。
作業場の気温は0℃。

手がかじかむ中、“箸入れ”の工程が行われます。



“箸入れ”は麺同士がくっつかないよう、
2本の大きな箸で、麺をさばく作業です。
寒さで動かない手に加え、
箸を麺の間に通すことのむずかしいこと!
それでも手分けして、淡々と作業は進みます。

乾燥が終わったら、いよいよ“こわり”です。





ざくっ、ざくっ、と麺を切断。
19cmの長さにカットすると、
おなじみのそうめんの姿が現れました。

6kgほどもある一束を、
トントンと揃える手さばきがとても大胆。
細いそうめんが折れてしまわないか、心配になるほどですが
縦に衝撃が加わる分には、意外に大丈夫なのだとか。

そして最後の工程“結束”に移ります。



“結束”は奥さんの作業です。
唯一ここだけが、座っての作業。
部屋も少しだけ暖かく感じます。

機械で50gずつに束ねられた麺を、一束一束検品し、
折れた麺、曲がった麺などを取り除きます。
除いた分、足りなくなったグラムを補うため、
1本0.1~0.2gほどの麺を差し込み、箱に収めていきます。

「やっぱり日によって、麺の出来が違うからねえ。
あまりよくない日は私の出番かな。」と、奥さん。
夫婦だから、家族だから成り立つ仕事、
生まれるおいしさなのです。



日が暮れたころ、ようやく一日の仕事が終わります。
次の日はまた午前4時から。

春が来て、暖かくなるまで、麺づくりは続いていきます。



***

できあがったそうめんは、
丹波の黒太郎工場内の乾麺専用の蔵で熟成させます。

製造の年の梅雨を越し、
次の年の夏から出荷を始めるそうめんは、
「古物(ひねもの)」とよばれる上物です。
梅雨を越すことで、そうめんがきゅっと引き締まり、
さらに強いコシが生まれます。









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そうめんの一大産地、兵庫県奥播磨の地で昔ながらの手延べにこだわり、麺作りに勤しむ二人の匠。手間ひまを惜しまず作り上げる麺は、どれをとっても絶品です。